.

道しるべ 承

10年後の自分へ

その子の担任を受け持ったのが、8年前のことです。中学1、2年生の複式学級でした。1年が女子1人、2年が男子2人という構成でした。私も複式学級を担当するのは初めて、彼らもまた初めての経験でした。授業は基本的に学年別に行い、食事や掃除、ホームルームのときだけ一緒になりました。限られた時間しか同じ空間にいない彼らをどうやったら「クラス」に出来るだろう、このことばかり考えていました。初めは彼らも途方に暮れていたようでした。でも、いろいろな行事を同じクラスとして迎え、乗り越えていく過程で、「クラス」としてまとまりました。残念ながらこの「クラス」は一年限定になってしまいましたが、私にとっても彼らにとっても、とてもいい経験になりました。

この中学1年の女子が今年成人を迎えた子です。初級部のとき同級生はいたのに、中級部入学を1人で迎えることになりました。複式学級はそのためです。彼女が「クラス」で楽しく過ごせるようにいろんなことをやりました。女子になって同じ年になれれば少しは寂しさをまぎらすことが出来るだろうかと、何度思ったかわかりません。本当の意味での彼女の寂しさや苦しさは、私にはわかりません。でもその苦しさを乗り越えたからこそ、今の彼女があるのだと思います。

彼女は今、自分の目標に向かってひたむきに努力しています。彼女がどんな選択をしても必ず乗り越えていける、絶対に成功する、心からそう思っています。成人式には参加できませんでしたが、当時授業中に書いた「10年後の自分への手紙」を送りました。「10年後の自分がだらしなく生活していたら横っつらをひっぱたく」と書いてありましたが、その必要はないでしょう。10年後にはあと3年ありますが、そのときにはきっと今よりもっとキラキラと輝いているステキな女性に成長していることでしょう。