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月刊イオ 6月号に掲載されました。

コリアンの女性と出会いたい!

「そろそろ結婚を」と考える年齢は何歳ぐらいなのだろう。「女性が最高値で売れるのは27歳だ」と昔観たドラマの主人公は言っていたが、「30歳を迎える前にそろそろ」と考える人も少なくないのではないだろうか。私自身、真剣に結婚を考えるようになったのは30歳を過ぎてからだった。その前は自分に余裕もなく、夫や父親になれる自信もなかった。
30歳で教員を退職し、地元に戻り、日本の企業に勤めた。ずっとコリアンの中にいたので日本人の職場に対して少し警戒も持っていたが、差別などはなく、ウリマル(朝鮮語)を使えることもあって、むしろ重宝された。懇意にしてもらい、食事に誘われることも多かった。これまで日本の方々と接する機会がほとんどなかったので、新たな職場はとても新鮮で、皆いい人たちだったので楽しかった。しかし、ある一面で不安は募るばかりだった。それは、出会う異性が日本人ばかりだったことだ。
地元に戻ってすぐ30~40代同胞たちの集まりである青商会(在日本朝鮮青年商工会)に属したが、出会うコリアンは男性ばかり。地元で青年同盟の活動を経験しなかったせいか、交際範囲も限られていて、コリアンの女性と知り合うことは皆無に等しかった。このままでは日本人と結婚することになるのではないかと焦りを覚えた。それが嫌なわけではなかったが、人生や思想の指向性がはっきりしている私を支持してくれる人と出会えるとは考えにくかった。同じ方向を向いて一緒に歩いて行ける人を探そうとすると、やはり在日コリアンを望む自分がいた。コリアンの女性と出会いたい、その一心であらゆるつてを頼って紹介してもらったり合コンを開いたりした。振り返ると、この経験が現在運営している「ちみートーク」に活かされているように思える。当時は「ちみートーク」のような出会いの場もなかったので自分で何とかしなければならなかった。
青年同盟を卒業した人たちも私と似たような危機感を覚えているのではないだろうか。特に女性の場合はより不安が大きいのではないかと思う。同胞の異性と付き合うどころか同胞と出会うことすらままならない。普段会うのは気のおけない友人だけ。その友人に「誰かいい人いない? 紹介してよ」とお願いすることも少なくないだろう。コリアンの少ない地方ではこの傾向がより顕著で、同胞数減少の大きな要因の一つとなっている。「ちみートーク」会員の約8割が30代で、女性が男性の1.5倍であるのは、こういった背景があるからだと考えている。実際にそういう声を耳にすることも多いし、出会いの場を設けたことを感謝されることも少なくない。
「気がついたら周りは日本人だけ」とならないためにも、男女年齢問わず、コリアンと出会える場に積極的に参加してほしいと願う今日この頃である。